ごろごろと過ごす寝正月。
今日は1月1日。
昨日までの3日間戦場で戦ってきた戦士たちの休息日だ。
菊の家の今には薄い本が山となり、その中で新春特番を映すテレビを流し聞きしつつ、炬燵の中煮入り、ジャージ姿で戦利品を読み耽る。
昨日までいた他のオタク仲間たちは自国に帰ったが、フランシスだけは残っていた。
「帰らなくてよかったんですか?」
菊は本から目を離すこと無く尋ねる。
「帰って欲しかったの?」
フランシスも同じ体制のままそうかえした。
「いえ、そういう訳ではありませんが、フランシスさんもお国で年越しパーティーなどおありだったのではないかと思いまして」
「んー俺はそういうのはいつもパスしてるんだよねぇ。それに、菊ちゃんと一緒に年越しするからって言ったら休みくれたし」
フランシスは寝転がった状態から起き上がり、次の本を物色し始める。
「それなら良いのですが……」
「それに、2日目にヒメハジメってのもしなきゃだしね」
さらっとそう言ったフランシスの言葉を、菊は流しそうになったけれどしっかりと捉えてしまった。段々と顔が熱くなる。
「フ、フランシス、さん?!」
「んー?何?」
「その、ヒメハジメとは、あれですか、馬に乗る方の……」
「俺は、馬より菊ちゃんに乗りたいかな」
フランシスが冗談めかして返せば、菊は更に顔を赤くするだけだ。
「もう、フランシスさんの馬鹿!」
「そんな俺が好き、なんだろ?」
パタンと薄い本を閉じ、手近な山の上に乗せると、炬燵に潜り、反対側の菊の横から体を出した。
「わっフランシスさん、何するんですか!」
「んー、照れてる菊ちゃん見とかないとなって思って?」
「そんなの見なくていいんですううう!!!」
ふいっと顔を背け、本でガード。
そんな行動をするところも愛しくて、フランシスはこらえきれずに笑いを漏らす。
「ほんと、菊ちゃんかーわいい」
「からかわないでください……」
「からかってるつもりはないよ?だって、お兄さん菊ちゃんにはいっつも本気だからね」
ぎゅっと菊の体を抱きしめて、自分の方へと向かせる。
そのまま驚きと期待をたたえた瞳を見つめる。
「今年もこうやって、菊ちゃんとずっとらぶらぶしてたいな」
「……程々にお願いしますね」
フランシスがそっと唇を合わせ、菊もそれに応えるように静かに眼を閉じて、フランシスに身を任せていった。