北米日
あと数分で年が変わる。
テレビからは除夜のかねを突く映像が流れ、菊はぽちくんとたまを抱えてこたつに入りながらうとうとしていた。
「今年ももう終わりですねぇ」
「きゅわん!」
「にゃう!」
のんびりと一人と二匹は年が変わっていくのを、今年もまたのんびりとまっていた。
「10、9、8・・・・・・」
テレビのカウントダウンに併せて菊も声に出して数える。
「3、2、1・・・・・・」
「菊ー!ハッピーニューイヤー!」
「菊さん、あけましておめでとうございます!」
菊がぽちくんとたまに「あけましておめでとうございます」という前に、ばーんめっしゃぁと障子が開き(壊され)、金髪の双子が顔を出した。菊は色々な驚きに言葉を失った。
「あ、アルフレッドさん、マシューさん・・・・・・?」
「今年一番に菊にアケマシテオメデトウゴザイマスっていいに来たんだぞ!」
菊が呆気にとられていることなど気づきもしないアルフレッドは、そういうと当たり前のようにこたつに潜り込んだ。
「アルフレッドはハッピーニューイヤーっていってたから、僕の方が先に明けましておめでとうございますって言ったんだけどな」
そういって、マシューもこたつに入る。
「Oh Shit!!」
アルフレッドはマシューの指摘に、頭を抱えた。
「君がいることをすっかり忘れてたんだぞ!」
アルはHAHAHAと笑ってばしんばしんとマシューの背中を容赦なく叩く。
「い、痛い、痛いってば!」
「なに言ってるんだい、痛くしてるんだから、当たり前だろ?」
アルは、自分の失態を、先に言ったマシューへの八つ当たりで晴らすことにしたようだ。
「あ、アルフレッドさんやめてあげてください」
見かねた菊がアルフレッドに制止をかけ、ようやく止まる。マシューはじんじんと痛む背を撫でた。
「はっぴいにゅぅいやぁでもちゃんと明けましておめでとうという意味なのでしょ?ならいいじゃないですか」
「やっぱり菊は優しいんだぞ!それに、その発音が下手なところ、すっごくキュートなんだぞ!」
ぎゅうっとアルは前から抱きつき、すりすりと頬ずりする。
「あー!ずるいよ!僕だって菊さんに抱きつきたいのに!!」
マシューは後ろから抱きつき、間の菊はぎゅうぎゅうと押し潰され、息がうまくできない。しかも、もう眠気が限界だったせいか、眠さが一気におそってくる。
「あのっふたりっともっ息が・・・・・・」
なんとかそういうと、ふぅっと菊の意識は遠のいていった。
「菊?!」
「菊さん?!」
二人は慌てて菊を放し、昏倒してしまった菊をそっと床に寝かせる。
「だ、大丈夫かな、菊さん」
「心臓は動いてるし、息もしてるんだぞ」
「なら、大丈夫かな」
二人はほっと息をつき、寝てしまった菊を見つめる。付きっぱなしになっていたテレビからは、わぁわぁと新年の喜びを祝うはしゃぎ声が溢れている。
「今日はもう夜遅いし、寝よっか」
マシューがぽつりというと、アルも菊が倒れてしまったことを反省したのか、うんとまるで叱られたわんこのようにしおらしくうなづいた。
「菊のヒメハジメもらおうと思ってたんんだけどな・・・・・・」
「菊さんの姫始めは僕がもらうんだからね!」
そうはいってもこの二人が懲りるわけもなく、二人は火花を散らす。
二人とも、一番大切なまだ菊に告白もしていないという事実はどこかに行ってしまっているようだ。
ぽちとたまは倒れたままの菊を心配して寄り添っている。
「二人トモソンナコトヨリ早ク菊ヲ布団ニ運ンダラドウダ?」
熊次郎さんがそう提案して、ようやく菊は布団に運ばれることとなった。
新年の夜に、家の賑やかさとは対照的に静かに雪が降り積もっていった。